2016年11月3日木曜日

バレーボールライフ:01【 はじまり 】

「ブルブルブルっ、ブルブルブルっ」

運転中に携帯が震えたのでポケットから出して、画面を見る。高校の同級生からメールだ。

「 明日、暇? バレーボールやらない? 」

ん?あいつバレーボールなんてやってたっけな?ま、いっか・・・。とりあえずコンビニの駐車場に車をとめて、携帯の中のスケジュール表をチェック。明日は暇だったので

「参加!場所と時間の情報よろしく!」

とだけ返事を送る。携帯をポケットにしまって、車のエンジンをかける。そのまま近所のスポーツショップに体育館用のシューズを買いに行くことにした。体育館用のシューズなんて高校の時いらい。ショップに着いたら、ガシガシシューズが並んでいるコーナーに一直線。バレーボールの知識ゼロだったので、いろんな種類があったが、全然バレーボール用じゃない一番色が綺麗な体育館用シューズを選んで即購入。車の助手席に投げ込む。これで明日の準備はバッチリだ。

高校時代の友達と会うのはいつも楽しい。大人になるとなかなか会うことができないから、余計一緒に遊ぶ時間できると楽しみだ。大人になってからいろんな趣味を探して、取り組むのは面白い。先生やら先輩とかに怒られながらやるのとは違い、自分の好きなようにスケジュールを組めるし、無理をする必要もない。自分に合ってるなと感じたらマイペースでのめり込み、学べる自由がある。友達と遊んでるとそういったことを見つけるきっかけになることがある。それよりなにより仲間と一緒なのでそれだけで楽しい。

次の日、急いで仕事を終わらせて体育館に向かう。体育館に到着する前から久しぶりに友達に会うのでウキウキしてた。体育館の駐車場に到着して車を止める場所を探してグルグルしてると友達の車はもう止めてあった。

「 もう着いてるな・・・」

買ったばかりのシューズを履いてキュキュッっという音が響く体育館の中に入ると・・・いた!

「 遅いじゃん!仕事忙しかった? 」
「 これでも急いで来たんだよ! 」

練習の参加者がまだ全員揃ってないみたいで、集まったメンバーはボールで遊びながら人数が揃うのを待ってるような感じだった。今日のバレーボール練習会に参加するメンバーは社会人がほとんど。仕事が終わる時間がみんなバラバラだろうだから仕方がないだろう。自分は初めてここの練習に参加するので知らない人ばかり。「初めまして、宜しくお願いします!」と挨拶をしながらボールを触った。話を聞いてみると近所の気が合う仲間でバレーボールをやって、その後飲みに行くのが定番のコースらしい。うまい酒を飲むためにバレーボールをやる感じかな。男子だけだと思ってたら女の子も3人くらいいて、一緒にやるようだ。一人コーチみたいな背の高い人がいて、やけに巧い。みんなに「先生!」って呼ばれてる。コートの端っこの方でそのコーチは一人の女の子に丁寧にレシーブを教えてた。自分たちは仲間で「パスやろう!パス!」と3人でパスを始めた。パス交換をやってると、少しづつ体が温まってくる。仲間同士でアタックを打つように床にボールを叩きつけたり、バスケットのダンクシュートみたいにジャンプして両手で床にボールを叩きつけて誰が一番高い場所までボールを弾ませることができるのか競い合った。バレーボールをやるのは高校生のとき以来。ボールは自分の狙った場所に、まったく飛んで行ってくれない(きっぱり)。

「 まぁ相手のコートにボールを返し続ければいいんだろ 」

みたいなイメージで体を動かしてた。体育の授業でバレーボールがあったのと、昼休みに高校の校庭で遊びで何回かやっただけだったからな(笑)。

「 じゃ3レシやりますー! 」

女の子の一人が声を出して3レシなるものが始まった。何をするのか様子を見るため、順番を友達にゆずり、ボール拾いをしながらその3レシなる練習を観察。さっきの上手な人(先生と呼ばれる人)がアタックを打ち、3人で守るようだ(素)。ふむふむ・・・。要するに3人でアタッカーからの攻撃をレシーブし続ければいいようだ。が・・・それがとても難しそうだ。3人ともなぜか、コートの隅の方まで全力ダッシュでボールを追っかけてる。なぜだ(笑)。

「 交代ー! 」

その掛け声でレシーブする3人が入れ替わる。アタックを打つのは先生。たまに強く打ったり、ゆるいボールをコートの端いっぱいに流したりして、守ってる3人をいろんな方向に走らせる。いきなりガクッとなるのはフェイントだ。

「 先生、いきなりフェイントやんないで! 」
「 フェイントはいきなりやるものです 」

・・・先生が言ってることが正しい(素)。先生はまったく同じフォームで強いアタックを打つ時もあれば、ポンっというゲキ弱のボールを繰り出してくる。足に少し自信があるので、ダッシュして速く動いてると、さらに速いペースで走らされる(驚)。先生はギリギリで取れないボールを打ち出す。

「くっ! (キュキュキュっ) 」

追いつきそうで、追いつけない。息が切れ始めた時くらいに「交代ー!」の声がかかった。悔しい・・・。もう少しウマくできそうなもんだが、追いつけないボールがいっぱいあった。

「 給水したらアタックー! 」

おぉ、アタックだ!ごくごくコーラを飲んだ後に、アタック練習初体験。さっき3レシで打っていた先生がネットの近くに立ってる。またもやシステムを理解してないので、列の一番後ろに並んでやり方を学ぶ。アタックを打ちたい希望者が1列になって並び、先生に向かってパスを出すと、先生がポーンとトスを上げ、そのボールを全力でアタックするシステムらしい。自分の順番になり、先生からくるトスに向かって全力でジャンプ!そしてスパイクを打ち込んだ!!

「スパーン・・・」

と、音だけは立派だがスパイクはネットの中段に!うーむ・・・イメージと違う。一人3回ずつアタックを打つらしく、よし次はバッチリだと!ジャンプして思い切り打ったボールは相手コートどころか、遥か向こうの正面の壁の真ん中にパスンと当たる。アタックを打つ時の助走を思い切りダッシュすると、ジャンプする直前にネットにぶつかってしまい、笑われた(笑)。はい、まったく上手にスパイク打てません(きっぱり)。「ありゃりゃー・・・」自分でも笑ってるといきなり後ろで・・・

「 バキン!! 」

お? お!? 後ろに並んでいた背の低い女の子が打ったアタックはボールが綺麗な曲線を描きながら相手コートに入った。ナイススパイク!!・・・すごいじゃん!そうか、この女の子はアタッカーだったんだ。その時初めて気がついた。ささーとダッシュして、ネットの近くで「キュキュっ!」と音をたててしゃがみこむと、シュンっとジャンプしてボールを打つ姿は自分たちよりレベルが50段くらい上だ。

自分や部活での経験がない奴らは皆、自分のやり方でアタックを打ってるが、なんだかテレビで見るフォームと違う。でもそのアタッカーの女の子のアタックは綺麗なフォームだったし、しかも強いスパイクが相手コートにちゃんと入ってた。

「 おぉ・・・練習すればこれができるようになるのか?? 」

テレビで見るアタックがこんなにもできないものと認識しつつ、そして・・・背の低い女の子が勢いよくアタックを打ってる姿を目の前で見てびっくりするのとで、頭の中が忙しかった。

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